書籍カテゴリー:感染症学

インフルエンザとかぜ症候群

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インフルエンザとかぜ症候群

第2版

  • 久留米大学名誉教授 呉共済病院名誉院長 加地 正郎 編

定価:4,950円(本体4,500円+税10%)

  • B5判 222頁
  • 2003年11月 発行
  • ISBN978-4-525-23002-9
  • ISBN4-525-23002-9

概要

この1冊でインフルエンザに関する知識がすべて得られる,診療・予防に携わる方に最適の書.本改訂では,抗インフルエンザ薬の臨床の実際,迅速診断キットの有効な使用法,高齢者・小児罹患時の診断・治療のポイント,合併症の治療,施設内での感染予防対策,インフルエンザとの鑑別が問題視される”SARS”についてなど,臨床面でのアップデートに特に努めた.

序文

日常診療においてかぜ症候群は最も多い疾患であり,内科,小児科のみならず臨床各科においても診療を必要とする機会が多いが,ふつうは軽症に経過するところから臨床医の関心はさほど深くはないようである.
しかし,各個人の日常生活あるいは社会におけるかぜ症候群の影響は意外に大きい.その中でも特にインフルエンザは,臨床的には症状の重篤さ,高齢者の肺炎,小児の脳症,脳炎といった重篤な合併症などの点から,また毎年流行を繰り返し,多数の罹患者と死亡者を出すところから,その重要性は最近とみに認識されてきている.
インフルエンザの病原ウイルスについての基礎的研究は急速な進歩を遂げつつあり,ウイルス粒子そのものの構成,細胞レベルでのウイルスの感染・増殖,ことに依然として繰り返されている流行の解明に密接な関連をもつウイルスの抗原変異の問題について広汎かつ精力的な研究の知見が集積されつつある.その関心の中心に位置する“新型ウイルス”の登場とそれによる世界的大流行の可能性も危惧されている昨今である.
このようなインフルエンザに対して,診療の面ではごく最近新しい局面の展開がみられている.抗インフルエンザ薬としてアマンタジンに続くノイラミニダーゼ阻害薬の登場と迅速診断キットの開発,普及である.これらはインフルエンザの実地診療に携わる医師にとっての強力な手だてとなりつつあり,その期待は大きい.
また,診療とならんで,あるいはそれよりさらに重要と考えられるのが予防対策である.その中心的役割をもつのがワクチンであるが,従来わが国においてはその有効性についての議論が多かった.最近ようやく予防接種も軌道にのって来たようであるが,このワクチンについては疫学的な観点に立つ正確な考察が必要である.
このようなインフルエンザという感染症を正面からまともにとりあげた著書は欧米においてもごく少なく,わが国についてはほとんどみられない.かぜ症候群の中で最も重要な位置を占めるこのインフルエンザを,臨床,病原,疫学の各方面からとりあげて本書を上梓した所以である.
1997年に初版発行以来,幸いに多くの読者を得た.今回の改訂を機に,病原ウイルスについては臨床,公衆衛生に携わる方々に必要な基礎的事項を中心に本郷誠治教授に,また新たに流行学については小田切孝人先生に執筆をお願した.最近ますます重要性を増してきたインフルエンザワクチンについては従来どうり斯界の権威廣田良夫教授に担当していただいている.臨床面では初版での増刷の機会に新型インフルエンザAH5N1の流行(2刷,1998年),新たに薬価収載となったノイラミニダーゼ阻害薬および迅速診断法(3刷,2000年)を追加したが,今回の改訂を機に本格的に最新の事項を取り入れた.
2002-2003年に突如として出現,全世界を恐怖に陥れた“SARS”は新型コロナウイルスによる致死率も高い呼吸器感染症であって,それとの関連でもインフルエンザがクローズアップされさらに関心が集まっている.インフルエンザの診療あるいは予防に携わる方々にとって,本書が問題解決の資となり,さらに理解を深めていただくためのお役に立てば幸甚である.
終わりに,本書について周到なお世話をいただいた南山堂窪田雅彦編集長に心からの謝意を表する.

2003年9月 著者を代表して 加地正郎


なお「インフルエンザ」シリーズとして,新型インフルエンザについては「新型インフルエンザパンデミック」,またワクチンについては「インフルエンザワクチン接種の実際とコツ」(いずれも南山堂より出版)で詳細に記述されているので御参照いただければ幸いである.

目次

日常診療の中のかぜ症候群

インフルエンザの流行史加地正郎
 A.歴史にみるインフルエンザ
 B.猛威をふるったスペインかぜ
 C.病原ウイルスの発見まで
 D.最近の大流行

インフルエンザウイルス本郷誠治
 A.ウイルス粒子の性状,抗原型
  1.ウイルス粒子の構造
  2.遺伝子構造
  3.ウイルス蛋白の性状と機能
  4.A型,B型,C型に特有な遺伝子発現機構
  5.インフルエンザウイルスの増殖機構
 B.抗原変異
  1.不連続変異
  2.連続変異
  3.B型とC型ウイルスの抗原変異
 C.感染と免疫
  1.自然免疫
  2.獲得免疫

インフルエンザの臨床
 A.かぜ症候群の中のインフルエンザ
  1.かぜ症候群の病型
   1) 普通感冒
   2) インフルエンザ
   3) 咽頭炎
   4) 咽頭結膜熱
   5) クループ
   6) 気管支炎
   7) 異型肺炎
   8) 肺 炎
  2.病型と病原との関係
 B.インフルエンザの基本的臨床像
  1.潜 伏 期
  2.単純型インフルエンザ
 C.合  併  症
  1.肺炎合併症
   1) 肺炎の合併頻度
   2) 肺炎の合併機序
   3) 肺炎合併症の分類と病像
   4) インフルエンザ肺炎の合併素因
  2.神経合併症
   1) インフルエンザ脳炎・脳症
   2) Reye 症候群
   3) ADEM および小脳失調
   4) 脊髄炎
   5) その他の精神・神経症状
   6) 髄膜炎
   7) 末梢神経障害特にギラン・バレー症候群
   8) 筋疾患
  3.神経合併症の発生機序
  4.心合併症
 D.高齢者における臨床上の特殊性
 E.小児における臨床上の特殊性
 F.インフルエンザ C

診   断
 A.臨床診断
  1.臨床 - 疫学的診断
 B.鑑 別 診 断
  1) かぜ症候群の他の疾患ことに普通感冒 2) 溶連菌性咽頭炎 3) 細菌性肺炎 4) 肺結核 5) 胸膜炎
  6) 粟粒結核 7) 咽頭ジフテリア 8) 肺癌 9) 急性ウイルス肝炎特にA型肝炎 10) 伝染性単核細胞症
  11) 髄膜炎特にウイルス性髄膜炎 12) 急性腎盂腎炎 13) 亜急性細菌性心内膜炎  14) 敗血症 15) 膠原病
  16) 腸チフス 17) レプトスピラ症 18) つつが虫病 19) Pontiac fever 20) 急性Q熱 21) その他
  追記:重症急性呼吸器症候群(SARS)
 C.病 原 診 断
  1.血清診断
  2.病原ウイルス分離,抗原証明
  3.インフルエンザ迅速診断キット
   1) 検体を採取する時期
   2) 検体の採取部位
   3) 検体の保存条件
   4) 検体のウイルス抗原濃度
   5) A型およびB型が両方とも陽性となった場合
   6) 迅速診断キットと臨床診断

治   療
 A.抗インフルエンザ薬療法
   1) アマンタジン
   2) リマンタジン
   3) ノイラミニダーゼ阻害薬
   4) リバビリン
   5) インターフェロン
   6) エアゾル噴霧吸入療法
 B.対 症 療 法
  1.発熱・頭痛
  2.鼻汁・鼻閉
  3.咽頭痛
  4.咳・痰
  5.去痰薬
  6.気管支拡張薬
  7.総合感冒薬
 C.一 般 療 法
 D.合併症の治療
  1.肺炎
  2.脳炎・脳症
 E.予防的抗菌療法
 F.高齢者の治療のポイント
 G.小児の治療のポイント

インフルエンザの流行学
 A.インフルエンザサーベイランスの役割
 B.グローバルネットワークの中でのインフルエンザ株サーベイランス
 C.株サーベイランスからわかる最近の流行状況
 D.インフルエンザワクチン株とその選定経緯

インフルエンザ対策と疫学研究
 A.インフルエンザの流行と対策
   1) 流行の大きさと影響の大きさ
   2) インフルエンザの予防とワクチン
   3) 予防接種の対象
   4) 予防接種の普及
 B.インフルエンザワクチンと疫学研究
   1) 日本の現状
   2) インフルエンザ疫学研究の特殊性
   3) 方法論
   4) 結果の妥当性
   5) 結果の解釈
   6) リスク因子と予防
 C.インフルエンザワクチンの課題

予   防
 A.一般的なかぜ予防
   1) マスク
   2) うがい
   3) 休校措置と学級閉鎖
 B.予防接種の実際
   1) インフルエンザ HA ワクチン
   2) 接種法 および 接種量
   3) 効果
   4) 接種対象
   5) 禁忌 および 接種上の注意
   6) 副反応
   7) 薬剤代謝に及ぼす影響
   8) 今後のワクチン開発の方向
 C.抗インフルエンザ薬の予防内服について
  1.予防内服の実際
 D.インフルエンザの施設内感染予防
  1.平素からの対策
  2.流行期における対策
  3.施設内患者発生時の対策

新型インフルエンザ
  1.サーベイランス
  2.ワクチン
  3.医療体制
  4.情報の提供・公開
  5.まとめ