書籍カテゴリー:神経学/脳神経外科学|総合診療医学/プライマリ・ケア医学

Medical Skill 脳卒中を防ぐ

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Medical Skill 脳卒中を防ぐ
病診連携の最前線

1版

  • 熊本市民病院部長 橋本 洋一郎 著

定価:4,180円(本体3,800円+税10%)

  • B5判 264頁
  • 2003年3月 発行
  • ISBN978-4-525-24481-1
  • ISBN4-525-24481-X

概要

前触れ(一過性脳虚血発作)や軽症脳卒中の段階で積極的な診断や治療を行い,重症脳卒中への移行を阻止してやることがかかりつけ医や第一線の開業医の役割である.本書は脳卒中の予防と早期診断をメインに,発症した場合の対処法,移送時期まで,専門医が幾多の経験から導き出したノウハウを具体的に解説してある.

序文

脳卒中患者に対しては症候の進行・再発を予防するために可及的に早期の内科的・外科的治療が望まれる.1995年,米国National Institute of Neurological Disorders and Stroke(NINDS:米国立神経病・脳卒中研究所)から脳梗塞に対する「発症3時間以内」の血栓溶解薬である遺伝子組み換え型組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)の静脈内投与療法の有効性が報告された.1996年にこのt-PAが,米国で初の虚血性脳血管障害急性期の治療薬として認可された.これより米国では,心筋梗塞の『Heart attack』に対して,脳卒中を『Brain attack』と呼び,『Stroke is an emergency(脳卒中は緊急疾患である)』いう一大キャンペーンを展開するとともに,救急医療体制の整備が急速に行われている.脳卒中と考えられる症状が出現した場合には,救急車を呼び,すぐに脳卒中専門病院に搬送し早期治療を受けるといった早期受診・早期治療の必要性(Time is brain)が啓発されている.
わが国でもt-PAの治験が進行中であるが,脳保護薬は世界で初めて使用可能となった.今後も脳卒中患者の転帰について早期受診が重要な要素となることは明らかである.しかし実際は,脳卒中専門病院への受診遅れが多く,患者側の問題(patient's delay)と医療者側の問題(doctor's delay)が存在する.このような中で,普段の健康管理を行っているかかりつけ医の役割が大きいと考えられる.さらに一般市民への教育(脳卒中の予防,発症時の早期受診)や救急隊員への教育(脳卒中患者搬送のトリアージ)も必要である.
一方で健康に対する意識の高揚に伴い,不定愁訴で受診する患者も増加している.これらの訴えの中から重大疾患の前駆症状を見極め,水際で捉え,危険を回避させることができるようにしなければならない.すなわち前触れ(一過性脳虚血発作)や軽症脳卒中の段階で積極的な診断や治療を行い,重症脳卒中への移行を阻止することが重要である.近年の診療は,1つの病院で診療するのではなく,診療所(ホームドクター),急性期病院,リハビリテーション専門病院などが病診連携を行う地域完結型の診療態勢構築が急速に進んでいる.その最前線で診療にあたる内科系開業医の役割はさらに増すものと考えられる.
本書は,内科系開業医や一般内科医を対象とし,予防と早期診断をメインに,発症した場合の対処法,移送時期まで,幾多の経験の中から導き出したノウハウを具体的に解説したものである.

2003年1月 熊本市立熊本市民病院神経内科 部長 橋本洋一郎


目次

第1章 ブレイン・アタック
I.受診の遅延
II.ブレイン・アタック・キャンペーン
III.急性期病院とブレイン・アタック
IV.かかりつけ医とブレイン・アタック
V.一般市民への啓発
 1.一般市民の知識向上
 2.日本脳卒中協会
 3.全国脳卒中者 友の会連合会
VI.救急隊員への教育
VII.脳卒中救急治療の鎖

第2章 脳卒中を疑え
ー軽症脳卒中を見つけるー
I.診断過程
 1.症状と徴候
 2.神経所見のポイント
 3.鑑別診断
 4.神経症候
II.ブレイン・アタック・キャンペーンの症状
 1.半身の運動,感覚障害
 2.意識障害と言語障害
 3.突然の視力障害
 4.歩行障害・めまい・ふらつき・失調
 5.激しい頭痛
III.病歴と一般身体所見
 1.病歴の聴取
 2.臨床病型と症候
 3.一般身体所見と臨床病型
IV.特徴的な身体的神経学的所見
 1.麻  痺
 2.顔面麻痺
 3.共同偏倚
 4.感覚障害
 5.視力・視野障害
 6.眼球運動障害
 7.小脳症状・起立歩行障害
 8..反  射
V.隠れた症状を見逃すな−神経心理症候−
 1.高次脳機能障害の局在
 2.意識障害
 3.失  語
 4.半側空間無視
 5.病態失認
 6.感覚無視
 7.Acute confusional state
VI.NIHSS(National Institute of Health stroke scale)
 1.NIHSS
 2.Modified Rankin scale

第3章眼虚血症候群・無症候性脳血管障害
I.一過性脳虚血発作
 1. 概  念
 2. 症  候
 3. 診  断
 4. 成  因
 5. 治  療
II.眼虚血症候群
 1. 眼虚血症候群と心血管病変
 2. 一過性黒内障(TMB)
 3. 網膜動脈閉塞症(RAO)
 4. 虚血性視神経症(ION)
 5. 網膜静脈閉塞症(PVO)
 6. Venous stasis retinopathy(静脈鬱滞性網膜症)と ischemic oculopathy(虚血性眼症)
 7. 内頚動脈病変とホルネル徴候
 8. 同名半盲
 9. 検査と治療
III.無症候性脳血管障害
 1. 無症候性脳血管障害
 2. 無症候性脳血管病変

第4章 脳卒中発作が起こったら
−急性期脳卒中の取り扱い方と専門医への転送―
I.来院後の流れ
II.応急処置
 1. バイタルサインのチェック
 2. 酸素・呼吸管理
 3. 循環管理・補液
 4. 血糖管理
 5. 体温管理
 6. 不穏状態
 7. けいれん
 8. その他
III.血圧管理
 1. 脳梗塞と脳出血
 2. 脳梗塞と血圧管理
 3. AHAやNINDSの脳梗塞の血圧管理指針
 4. 脳出血の血圧管理
 5. くも膜下出血の血圧管理
IV.頭蓋内圧管理
 1. 頭部挙上
 2. 高張液注射療法
 3. 過換気
 4. 低体温療法
 5. ステロイド
 6. 筋弛緩薬
V.急性期脳卒中の手術適応
 1. 急性期脳梗塞
 2. 脳出血
 3. くも膜下出血
VI.進行型脳梗塞
VII.栄養管理・合併症対策
 1. 補  液
 2. 栄養管理
 3. 深部静脈血栓症・肺塞栓症
 4. 感染対策と体温管理
 5. 嚥下性肺疾患
 6. 消化管出血
 7. 褥  瘡
 8. 心疾患
 9. 尿と便管理
VIII.薬物療法
IX.専門医への転送

第5章 X線CT
I.X線CTの活用
II.脳卒中患者に対する対応システム
III.Hyperdense MCA sign
IV.Early CT sign
 1. 発症機序
 2. 所見
 3. 血栓溶解療法との関連
 4. MRIとの関連
V.Early CT sign後の経時的変化
VI.神経症候と画像診断
 1. 神経症候とX線CT
 2. ラクナ梗塞と皮質下梗塞
VII.臨床症候と部位の対応
 1. 機能局在
 2. 大脳半球の機能局在
 3. 脳幹の機能局在

第6章 後は専門医に委せよう
 −脳卒中急性期の診断・治療の進歩―
I.脳卒中の診断
II.脳梗塞急性期の治療
 1. 脳梗塞の診断と治療方針
 2. 脳梗塞急性期の治療戦略
 3. 脳梗塞の薬物療法
III.脳梗塞の臨床病型ごとの治療
 1. ラクナ梗塞
 2. アテローム血栓性脳梗塞
 3. 心原性脳塞栓症
 4. その他の脳塞栓
IV.早期離床・早期リハビリテーション
 1. 早期リハビリテーション
 2. 早期リハビリテーションのリスク管理
V.チーム医療
 1. Stroke unit
 2. 各科の連携
VI.脳卒中のクリニカルパス

第7章 脳卒中はなぜ?起こる
I.わが国における病因の変化
II.病  因
 1. 生活習慣病
 2. 脳卒中の危険因子
 3. 発症の引き金となる誘引
III.修正不能な因子
 1. 年  齢
 2. 性
 3. 人  種
 4. 遺伝/家族歴
IV.修正可能な因子
 1.高血圧
 2.喫  煙
 3. 糖尿病
 4. 心疾患
 5. 無症候性頚動脈狭窄
 6. 高脂血症
 7. 肥  満
 8. 身体不活動
 9. 栄  養
 10.飲  酒
 11.薬物乱用
 12.過凝固状態
 13.ホルモン補充療法
 14.経口避妊薬
 15.炎  症
V.脳卒中の分類
VI.脳梗塞の臨床病型−脳梗塞にもいろいろある‐
 1. ラクナ梗塞
 2. アテローム血栓性脳梗塞
 3. 心原性脳塞栓症
 4. その他の脳梗塞や原因不明の脳梗塞
VII.脳出血
VIII.くも膜下出血

第8章 脳卒中は防げる−一次予防−
I.生活習慣の修正
 1.禁  煙
 2.身体活動
 3. 食事/栄養
 4. アルコール
 5. 薬物乱用
 6. 誘因の除去
II.危険因子の修正
 1. 高血圧
 2. 糖尿病
 3. 高脂血症
 4.心臓病
 5.一過性脳虚血発作
 6.無症候性頚動脈狭窄
 7.経口避妊薬
 8.肥  満
 9.抗血小板療法

第9章 脳卒中予備軍(軽症脳卒中)の治療の進め方−二次予防−
I.再発率と臨床病型ごとの治療指針
 1. 再発率
 2. 臨床病型ごとの治療指針
II.生活習慣病の修正(指針)
 1. 禁  煙
 2. 節  酒
 3. 入  浴
 4. 身体活動
 5. 栄養管理
III.危険因子対策
 1. 脳梗塞の血圧管理
 2. 脳出血慢性期の血圧管理
 3. 糖尿病
 4. 高脂血症
IV.脳梗塞の抗血栓療法
 1. 抗凝血薬療法
 2. 抗血小板療法
 3. 脳循環改善薬
V.外科的治療と血管内治療
 1. 頚動脈血栓内膜剥離術
 2. EC‐IC bypass
 3. 血管内治療
VI.その他の治療
 1. 脳代謝賦活薬
 2. 抗うつ薬
VII・回復期・維持期の診療態勢

第10章 地域完結型の脳卒中診療態勢
−病診連携の必要性―
I.脳卒中医療の問題点
 1. わが国の医療制度
 2. 脳卒中急性期医療の問題点
 3. 脳卒中診療の病期
 4. 急性期病院の在院日数短縮
II.急性期病院の在院日数
 1. わが国
 2. デンマーク
 3. 米国
 4. ドイツ
III.病院完結型と地域完結型
IV.急性期の医療
 1. 脳卒中センター
 2. Stroke unitとStroke care unit
 3. Stroke unitとクリニカルパス
 4. Stroke care unit と intensive care unit
V.回復期の医療
 1. リハビリテーション専門病院
 2. 回復期リハビリテーション病棟
 3. リハビリテーション専門病院の今後の課題
 4. リハビリテーションのトリアージ
VI.維持期の医療
VII.かかりつけ医
 1. 求められるかかりつけ医像
 2. 主治医としてのかかりつけ医
 3. シームレスケアの主役としてのかかりつけ医
VIII.地域リハビリテーション広域支援センターと
神経難病ネットワーク
 1. 地域リハビリテーション広域支援センター
 2.神経難病ネットワークと神経難病病棟
IX.シームレスケア

第11章 脳卒中にまつわる新しい話題
I.Stroke Unit
 1. Stroke Unit(SU)とは
 2. Stroke Unitの効果
 3. Stroke Unitにおける改善点
 4. 欧州におけるSUの現状
II.血栓溶解療法(rt-PA)
 1. 血栓溶解薬
 2. 静注療法
 3. 動注療法
 4. MELT Japan
III.脳保護薬の登場
 1.脳保護薬
 2.フリーラジカル消去薬
 3.エダラボン
 4.エブセレン
 5.ONO−2506
IV.非弁膜症性心房細動(NVAF)と脳梗塞
 1. 脳梗塞の発症
 2. NVAFからの塞栓発症予防(一次予防)
 3. NVAFによる心原性脳塞栓症の急性期治療
 4. NVAFによる心原性脳塞栓症の再発予防
 5. NVAFの治療
V.奇異性脳塞栓症(卵円孔開存)
 1. 奇異性脳塞栓症の原因疾患
 2. 卵円孔開存による奇異性脳塞栓症
 3. 卵円孔開存の頻度
 4. 卵円孔開存の検出法
 5. 心房中隔瘤と僧帽弁逸脱症
 6. 肺塞栓症と深部静脈血栓症
 7. 奇異性脳塞栓症の発症状況
 8. 奇異性脳塞栓症の治療

付 録
   脳卒中関連のホームページ
付録1 頭痛の診断と治療
1.頭痛の診断
 2.片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛の特徴
 3.片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛の治療指針
付録2 意識障害
付録3 痴呆―脳血管性痴呆とアルツハイマー型痴呆
付録4 日本脳卒中協会

索引