書籍カテゴリー:総合診療医学/プライマリ・ケア医学|精神医学/心身医学

対話で学ぶ精神症状の診かた
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対話で学ぶ精神症状の診かた

1版

  • 精神科医 宮内倫也 著
  • プライマリ・ケア医 樫尾明彦 著

定価:3,960円(本体3,600円+税10%)

  • A5判 314頁
  • 2019年11月 発行
  • ISBN978-4-525-38181-3

概要

向精神薬と漢方の使い方を2人の視点から

プライマリ・ケア医,精神科医のための精神疾患の診かたを解説.患者への言葉のかけかたや鑑別の手順など例を示しながら説明している.精神疾患に使える漢方薬の使い方も示しているので,西洋薬,漢方薬,非薬物療法と多様な選択肢を学ぶことができる.後半は家庭医と精神科医の対話となっており,それぞれの診療時の頭の中を知ることができる.

序文

プライマリ・ケア医から
 宮内倫也先生との出会いが全ての始まりでした.面識もなく,素性もわからない私から来た突然のメールに,宮内先生がご快諾くださったのが2017年12月でした.後押しいただいた南山堂編集部の方々にも改めて感謝申し上げます.そして,宮内先生とのネット上での対話が始まったのが2018年の年の瀬でした.共通のテーマに沿って宮内先生と対話をしていくなかで,メンタルの領域でそれまでどう対応すべきか悩んでいた「霧」が日々晴れていった感覚を,今でも覚えています.
 この本は,プライマリ・ケアで遭遇しそうな患者さんの精神症状への対応についてをテーマにしています.いろいろ寄り道してきた自分が唯一,取得・更新しているのが家庭医療専門医ですが,本書ではどんなセッティングで診療するにしても「プライマリ・ケアを担当する医師」として,「プライマリ・ケア医」という名称を使用しています.
 医療が細分化され,複数の科に並行して受診することが増えてきているなかで,プライマリ・ケアではその近接性から患者さんがまずやって来る入り口として,精神症状への対応が必要になる機会もあると考えます.また,すでに精神科や心療内科にかかっている患者さんから西洋薬を始める前や後で,その副作用の可能性や,漢方薬などに関するちょっとした相談も,プライマリ・ケアでは意外とあるのではないでしょうか.
 そのような相談に「精神科や心療内科ではないから」,「話を聞く十分な時間がないから」と蓋を閉めて詳しくは聞かないことも,患者さんと精神科や心療内科の先生との関係を考慮すれば,間違いではないかとも思われます.ただ,そこでどこまで診られるか(どこからは診るべきでないか)の線引きを常に意識しながら,精神症状に関する相談に対応することは,実はプライマリ・ケアにおける重要なニーズの1つなのかとも考えます.
 そういった事について学ぶには,日頃精神科や心療内科の医師がどのように考えているのか,どうすればプライマリ・ケア医とスムーズに連携を取っていけるのかについて,知ることがヒントになると思われます.
 対話の中で二人とも適度に(?)脱線しながら,「あるあるそういう事,なかなか教科書には書いてなくてね?」という「痒いところ」がいくつも出てきました.読者の皆さんにその解決への次の一歩が見つかるか……ぜひ読み進めていってください.

2019年10月
樫尾明彦


精神科医から
 本書は,精神症状をもつ患者さんに主にプライマリ・ケアの現場でどう接していくか,を念頭にしたものです.二部構成となっており,後半部分は給田ファミリークリニックの樫尾明彦先生との対話で,ここが本書の大きなポイントです.プライマリ・ケア医と精神科医という異なる目線の交差する先をご覧いただければと思います.前半部分は前座であり,後半用の基礎知識となっています.私が書籍や雑誌でこれまでに述べてきた考えをまとめており,精神療法,向精神薬,漢方薬について浅く述べています.
 後半の対話部分は,決して断定的なスタイルではありません.具体的な解決を示さず抽象的な言い方を多くしていますが,これは応用性を高めることを狙っています.
 そして,普段の臨床の悩みが二人のあいだで展開され,悩みそのままとして共有することで終わるものもあります.あえてそのような仕様にしており,“問題はその場で解決すべきものとは限らない”ことや“決定事項はその時の文脈によって容易に変更される”ということを意識しています.従来の医学書にある「これにはこう!」という書き方は,明快である一方,常に医療者側からの目線です.私たちの臨床は,医療者と患者さんとのあいだで,時には合意がつくられ,時にはつくられない,そして時には書き換えられるという不安定なものです.医療者が「正しい」と考える価値観のみで進めては,暴力性が生まれます.患者さんとのあいだを意識し,すぐには意見の一致を目指さない,ともすると頼りない雰囲気に身を預ける覚悟が必要です.それを味わってもらえれば,あえて言えば,消化しきれない不快さを感じていただければ,本書の狙いは達成できたと言えるでしょう.
 また,本書では“意志”という言葉が何度か登場します.昨今のトレンドである患者中心,意思決定支援,shared decision making(SDM)について,私はやや挑戦的な見方を持っています.これについては,賛成や反対などいろいろな考えを皆さんで持ち,発展していければと考えています.
 と,やたら真面目なまえがきになりましたが,対話がメインであり割とサクサク読めるものだと思っています.私のクセで脱線も多いのですが,対話からの連想ということでご容赦ください.ちなみに,私はかなりズケズケとした物言いをしていたのですが,南山堂編集部の素晴らしい力によって非常にマイルドに仕上がりました.安心してお読みください.

2019年10月
宮内倫也

目次

精神症状,ニシエヒガシエ
総 論
精神症状の診かた
向精神薬と漢方薬の使い分け,精神科への紹介タイミング
薬剤の副作用
疾患横断的精神療法
漢方薬を紹介する前に
抑うつ
うつ病の鑑別とその治療
抑うつの漢方的な理解とその治療
不安
不安の鑑別とその治療
不安の漢方的な理解とその治療
不眠
不眠の鑑別とその治療
不眠の漢方的な理解とその治療

対話から学ぶ 精神科医×プライマリ・ケア医×漢方
ケース 1 だるいんです……
ケース 2 なんだか調子が悪くって
ケース 3 会社で嫌なことがあって眠れません……
ケース 4 ワンオペ育児が哀しくて
ケース 5 これって更年期障害かしら
ケース 6 ベンゾってダメなんですか?
ケース 7 もうすっかり元気です!
ケース 8 妻が亡くなってから眠れません
ケース 9 西洋薬は増やせない,漢方はおいしくない
ケース10 自殺企図ですか……うちで診るんですか?
ケース11 義母の介護で眠れなくって
ケース12 BPSDで介護崩壊のピンチ

コラム
効果判定の時期や頓用としての使い方
漢方薬とエビデンス
肝気鬱結の治療
向精神薬との併用について
不眠用漢方薬の使い方
事前確率?
自己責任の危うさ
プライマリ・ケアにおける心理職との連携と今後の課題
転移と逆転移を超えて

索引